2026年12月5日。竹芝ポートホールに、ナガシマグループの社員が集まります。
長島梱包株式会社は、1926年(大正15年)に創業者・長島國治が東京・恵比寿で「長島商店」として産声を上げてから、ちょうど100年を迎えます。この節目に記念イベントを開催することは、ずいぶん前から決まっていました。
でも、それは「100年経ったからお祝いしよう」という単純な話ではありません。
関東大震災後の復興期に始まった小さな梱包業。創業者は正規の店員もいない個人商店から出発し、誠実な仕事ぶりで一つひとつの信頼を積み上げていきました。
その後の100年を振り返ると、戦時下の工場焼失、終戦後の焦土からの再出発、朝鮮戦争特需を経た成長、高度経済成長の波、オイルショック、バブルとその崩壊、阪神・淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災、新型コロナウイルス――。日本経済が何度も大きく揺さぶられるたびに、この会社はそのたびに立ち上がり、事業を続けてきました。
1943年には海軍監督工場に指定され、同じ年に恵比寿の工場が空襲で焼けています。1946年には「長島興業株式会社」として再出発し、焼け野原の中で応急住宅の建設を手がけながら食いつなぎ、やがて梱包業に立ち戻った。1968年に現在の「長島梱包株式会社」という社名になり、2005年には中国・蘇州に海外拠点を開設し、2024年には梱包業務プラットフォーム「PAX」の提供を始めた。
この歴史は、教科書に載るような華々しいものではありません。けれど、そこには確かに「どんな時代でも、目の前の仕事に責任を持ち、顧客の信頼に応える」という一貫した姿勢がありました。
100周年プロジェクトは、まずこの問いから始まっています。私たちは、この100年の歩みがどれほどのことだったのか、本当に理解できているだろうか、と。
プロジェクトの初期段階で、全従業員を対象にしたアンケートを実施しました。
回答数約270名。ほぼ全員です。
「自分の所属している会社を一言で表すなら?」
最も多かった答えは「アットホーム」でした。22名がこの言葉を選んでいます。次いで「信頼と誠実」「安心・安全」「誠実」。テーマ別に集計すると、「信頼・誠実・安心」が15.6%、「温かさ・アットホーム」が13.0%、「歴史・伝統・100年」が10.5%、「挑戦・変化・革新」が8.3%。
一方、「自分自身を一言で表すなら?」には、「コツコツ・努力型」が10.9%、「丁寧・正確・慎重」が10.1%、「前向き・ポジティブ」が9.8%という結果でした。
ここに面白い構造が浮かび上がります。
会社に対しては「アットホーム」「信頼」「伝統」という、いわば外から見た印象や雰囲気を語り、自分自身に対しては「コツコツ」「丁寧」「前向き」という、日々の仕事への向き合い方を語っている。つまり、一人ひとりの地道な仕事の積み重ねが、外から見た「温かくて信頼できる会社」というイメージを作り上げてきたということです。
この発見は、100周年ロゴの制作にも直接反映されました。「信頼と絆の礎」というコンセプトで、グループを代表する公式ロゴとして、歴史の重みと未来への約束を表現するデザインが進んでいます。
正直に言えば、周年記念イベントを「式典と懇親会で終わり」にすることもできました。60周年のときは八芳園で、70周年ではウェスティンホテルで、80周年には中国への視察旅行で祝いました。それぞれの時代にふさわしい形で節目を祝ってきた歴史があります。
しかし今回、プロジェクトチームはもっと踏み込んだ判断をしました。
100周年を、次の100年に向けた組織変革の起点にしようと。
プロジェクトは3つのチームで動き始めました。
戦略浸透チームは、会社の歴史と経営戦略を全社に届ける役割を担います。10年ごとに区切ったカウントダウンコンテンツを制作し、2026年3月から12月まで毎月、ナガシマグループの歴史を時系列で振り返るコンテンツを公開していきます。創業期から戦時下、戦後復興、高度成長、バブル、グローバル化、そして現在まで。それぞれの時代にどんな判断があり、何を守り、何を変えてきたのかを掘り下げます。加えて、OBや創業家へのインタビューも実施中で、文字資料だけでは伝わらない「当事者の声」を記録に残す作業が進んでいます。
社員満足度向上チームは、「この会社で働けて良かった」と社員が思える環境を具体的に作ることを目指しています。全社員から集めた声をもとに、人事評価制度の見直し、作業環境の改善、手当の再検討といった項目を整理し、役員会への提言を準備しています。作業服のグループ統一・刷新も検討しており、グループとしての一体感を目に見える形にする取り組みです。これは「100周年だから特別にやること」ではなく、100周年をきっかけに、本来やるべきだったことに正面から取り組むという姿勢の表れです。
未来創造チームは、ナガシマグループの「顔」を作るチームです。100周年記念ロゴの制作、特設ウェブサイトの企画と制作、記念映像の制作を担当しています。ロゴは全従業員アンケートの結果をもとにコンセプトを策定し、外部パートナーであるKIWA ART AND DESIGNと連携して制作を進めています。特設サイトは、社史や記念コンテンツだけでなく、採用活動にも活用できるブランディングツールとしての設計を目指しています。
この3チーム体制そのものが、100周年プロジェクトの本質を物語っています。歴史を振り返ること(戦略浸透)、足元を固めること(社員満足度向上)、未来を描くこと(未来創造)。
この3つが噛み合わなければ、周年記念は単なるお祭りで終わってしまいます。
プロジェクトメンバーは16名。役員から一般社員まで、部署も年齢層もバラバラです。
普段の業務では顔を合わせることのないメンバーもいます。
第1回ワークショップはキックオフとして、メンバーのモチベーション向上とチームビルディングを目的に開催されました。第2回は2026年3月に1泊2日の合宿形式で実施し、各チームのそれまでの活動を総仕上げするとともに、新しいチーム体制への移行を行いました。
合宿の2日間で起きたことは、普段の会議室では起きにくいことでした。役員と若手社員がフラットに意見を交わし、部門の壁を超えた議論が自然に生まれる。
「こうだったらいいのに」という本音が、提案書の形になっていく。12月のイベントに向けてすべてのタスクを洗い出し、各メンバーへの役割分担を明確にする。
この「横のつながり」の醸成こそが、100周年プロジェクトの隠れた成果かもしれません。
ナガシマグループのミッションは、「『包む』・『輸送』を通して世界中によろこびを届ける」です。
私たちが梱包し、輸送した機械や設備によって、世界中で製品が製造され、人々の暮らしが支えられている。その仕事は派手ではありません。完璧に梱包され、無事に届いたとき、梱包材は捨てられます。仕事がうまくいくほど、私たちの存在は見えなくなる。それが梱包業という仕事の本質です。
だからこそ、100周年という機会に、自分たちの物語をきちんと言葉にして届けたい。
100年間、黙々と「包む」と「届ける」を続けてきた会社が、今度は自分たちの歴史と想いを「包んで」「届ける」。それが、このプロジェクトのもう一つの意味です。
ナガシマグループには5つの信条があります。
1.「今日一日責任ある仕事をしよう」
1. 「みんなで築こう明るい職場」
1. 「自信と確信を持って前進しよう」
1. 「話し合い互いの理解を深めよう」
1. 「この意気で力を協せ会社を伸ばそう」。
100周年プロジェクトでは、この信条を壁に貼られたスローガンで終わらせないための取り組みも進めています。駅ポスターサイズの信条ポスターを各事業所に掲示し、信条に沿った行動エピソードを表彰する制度も設計中です。
さらに、各信条を実務における判断基準として具体化した「実践解釈ガイド」も検討中です。
たとえば、品質か納期で迷ったとき。部門間で利害が対立したとき。新技術の導入を提案されたとき。短期利益と長期投資で迷ったとき。それぞれの場面で、5つの信条がどう判断の指針になるのかを、具体的に言語化していきます。
100年前に創業者が大切にした「誠実に、目の前の仕事に向き合う」という姿勢を、今日の判断のものさしとして使えるようにする。それは過去への敬意であると同時に、未来への投資です。
中期経営計画「Beyond 100」は、売上50%向上、営業利益80%向上、労働生産性12%向上という具体的な数値目標を掲げています。DXの推進、環境配慮型包装材の開発、梱包業務プラットフォーム「PAX」の展開。ナガシマグループは、100年の節目を「ここまでよく頑張った」で終わらせるつもりはありません。
100周年プロジェクトは、記念イベントの準備委員会ではありません。
次の100年を創るための実行プロジェクトです。
歴史を知り、現在と向き合い、未来を描く。
その3つが一体になったとき、はじめて「100周年をやる意味」が生まれる。
私たちはそう考えています。
2026年12月5日。竹芝ポートホールで、私たちは100年分の感謝を伝え、次の100年への一歩を踏み出します。
ナガシマグループ 100周年プロジェクトチーム